睫毛内反(逆さまつ毛)について
まつ毛が内側を向いて、常に「逆まつ毛」のような状態になっていることを睫毛内反といいます。上下どちらのまつ毛にも起こる可能性があり、上下同時に起こる場合もあります。通常のまつ毛は、ある程度水平か前を向いて生えているため、黒目の部分に触れることはありません。しかし「睫毛乱生」といって、1本1本が違う方を向いていたり、ある部分だけが違う方を向いていたりすることがあります。また「睫毛重生」といって、まつ毛が何列も生えている場合にも、眼球に近い部分が内側を向くことがあります。
まつ毛が内側を向いていると、角膜に接触して障害が起こり、涙が出たりチクチクとした痛みを感じたりします。こうした症状を引き起こす状態を睫毛内反症といいます。
受診のタイミング
子どもの内反症(先天眼瞼内反症や睫毛内反症)は、成長につれて自然に治ることが多いため通常、学童期くらいまでは手術は行わずに様子をみます。角膜の傷や乱視によって弱視が心配される場合には、低年齢のうちに手術を行った方がよいことがありますので、角膜の状態や視力の確認のため、定期的な受診をお勧めします。
検査・診断について
睫毛内反症では、写真を撮影したり、まばたきする様子を観察したりして、角膜にまつ毛が当たっているかどうかを確認します。目にまつ毛が当たっていると考えられる場合、目の表面の傷を調べる検査を行い、傷の位置を確認します。一部の場所だけに傷がついているのであれば、そこに睫毛内反症が起こっていると考えます。
また、下のまつ毛が上を向いていることを明らかに目視できる場合などでも、診断をつけられることがあります。目に傷がついていることが分かれば、それがまつ毛による傷なのかどうかを見分ける必要があります。たとえば、目をうまく閉じられていなかったり、目が乾燥したりして傷がついている場合もあれば、まつ毛でこすられて傷がついている場合もあるからです。
治療について
皮膚切開法
睫毛内反症の治療方法は基本的に手術です。睫毛内反症はまつ毛の生える方向の問題なので、手術は皮膚を切開してまつ毛の向きを変えることを目的に行います。まぶたを開く筋膜と皮膚がくっついた状態をつくることで、睫毛内反症の改善を目指します。二重の線ができると、目を開けたときに皮膚が引っ張られてまつ毛が上を向くため、内反症が起こりにくくなるからです。
手術そのものにかかる時間は通常20分程度です。大人の場合は基本的に局所麻酔で日帰り手術を行います。小さなお子さまの場合は全身麻酔をかけるため入院が必要で、体への影響がなければ翌日以降に退院できます。幼少期の子どものまつ毛は細くてやわらかく、症状が軽い場合は経過観察を行うこともあります。
埋没縫合法
埋没縫合法は、皮膚の切開は最小限にして糸での固定を行います。処置室で実施できることが特徴ですが、糸が切れると元の状態に戻ってしまう可能性もあるため、症状が軽度の場合に行うことが多いです。
治療は保険内で実施可能
睫毛内反症の治療である皮膚切開法と縫合法は、どちらも保険内で受けることができます。受診時にかかる実際の費用は、術式、入院の有無、麻酔方法などによって異なります。お気軽にご相談ください。